東京は

「東京の夜は7時」なんてうたがあったね、昔。


首都高を走る。珍しく、久方ぶりに。
行きは日差しの下、帰りは夜。
東京の良さも悪さも美しさも汚らしさも驚きも空虚さも
全部ない混ぜになって、圧倒的に「東京の正体」をよく表しているのは「夜」だと思う。
高架と高架が入り組んだ隙間から日本橋の街灯の頭がのぞく…
なんて光景は、グロテスクで、小さな感嘆のポイントだ。


いつも目にするターミナル駅のビルを
「こちら側」ではなく、「あちら側」から見る。
そうすると立ち上ってくる過去の記憶や非日常。
私がこの街にこうしている(本当にいるのかも定かではないが)ことが「現実」からひっぺがされて、
どんどん現実感が薄らいでいく。


同乗者たちのおしゃべりをBGMに
おどろおどろしいビル群とイルミネーションの脅迫に、1人耐えていた。


東京は、一体何者だろう。
この街に住み行き交う人にとって、私にとって、どんな魔物なんだろう?